北欧の予防歯科から学ぶ|なぜスウェーデン人は歯が良いのか
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北欧の予防歯科から学ぶ|なぜスウェーデン人は歯が良いのか
著者:歯科医師
はじめに
「スウェーデン人は歯が良い」という話を、歯科医療関係者の方なら一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。実際、北欧諸国、とくにスウェーデンは世界でもっとも予防歯科が発達した国のひとつとして知られています。今回は、スウェーデンの歯科事情を客観的なデータとともにご紹介しながら、日本の優れた点や、これから参考にできそうなポイントを一緒に考えていきたいと思います。
1. スウェーデンの歯科事情:数字で見る予防大国
スウェーデンでは、1970年代から国を挙げた予防歯科プログラムが展開されてきました。その成果は数字にもはっきりとあらわれています。
- 12歳児のDMFT指数(虫歯経験歯数)は約0.6〜0.8(スウェーデン社会庁・SoS, 2022)。WHOが定める世界目標「1.0以下」を継続的に達成しています。
- 19歳までの歯科医療費は全額無料。一部の地域では23歳まで無料化されています。
- 成人も国の歯科補助制度(Tandvårdsstöd)により、年間600〜900スウェーデンクローナの予防補助が支給されます。
- 3歳児健診の受診率はほぼ100%に達し、リスクに応じた個別予防プログラムが組まれています。
とくに特徴的なのは、虫歯を「治療する病気」ではなく「予防・管理する慢性疾患」として捉える文化が、医療者だけでなく国民にも深く浸透している点です。歯科衛生士(Tandhygienist)の役割が非常に大きく、定期的なリスク評価とセルフケア指導が日常になっています。
2. 日本の歯科医療の素晴らしさ
一方で、日本の歯科医療にも世界に誇るべき優れた点が数多くあります。
- 国民皆保険制度により、誰もが低負担で高度な歯科治療を受けられること。これは多くの先進国がうらやむ仕組みです。
- 治療技術の精緻さ。特に補綴(被せ物・詰め物)、根管治療、義歯製作の精度の高さは世界トップレベルと評価されています。
- 8020運動の継続的な成果。80歳で20本以上の歯を持つ人の割合は、2022年の調査で51.6%(厚生労働省・歯科疾患実態調査)に達し、運動開始時の7%台から飛躍的に向上しました。
- 学校歯科健診制度。全国の小中学校で年1回以上の歯科健診が行われており、12歳児DMFT指数も0.5(2022年)と、スウェーデンに匹敵する水準まで改善しています。
- 歯科医院へのアクセスのしやすさ。人口あたりの歯科医院数は世界有数で、地方でも比較的受診しやすい環境が整っています。
このように、日本の歯科医療は「治療の質」と「アクセス性」において、すでに世界トップクラスの水準を達成しています。
3. 日本が北欧から学べる視点
では、日本がさらに前進するために、スウェーデンから参考にできる点はどこにあるでしょうか。
(1) 「予防のための定期受診」を文化にする
スウェーデンでは、症状がなくても1〜2年に一度の予防受診が「当たり前」です。日本では「歯科は痛くなったら行く場所」というイメージがまだ根強く、定期受診率は成人で約50%前後(厚生労働省, 2022)にとどまります。受診のきっかけを「治療」から「メンテナンス」へ転換していく啓発が、今後の鍵となりそうです。
(2) 歯科衛生士の活躍の場を広げる
スウェーデンでは、歯科衛生士が独立してリスク評価・予防処置・指導を行います。日本でも歯科衛生士の専門性は非常に高いものの、業務範囲の制度的制約が課題として議論されています。チーム医療としての役割分担の見直しは、今後の重要なテーマでしょう。
(3) 予防への保険適用の拡充
日本の保険制度は治療中心の設計のため、健康な人が予防で受診すると自費になる場面が多くあります。スウェーデン型の「予防補助」のような仕組みは、長期的には医療費抑制にもつながると考えられます。
(4) リスクベースアプローチの導入
スウェーデンでは「カリオグラム」などのリスク評価ツールを用い、一人ひとりに最適化された予防計画を立てます。日本でも一部で導入が進んでいますが、標準化にはまだ余地がありそうです。
おわりに
スウェーデンの予防歯科は確かに世界の先頭を走っていますが、日本もまた、独自の優れた歯科医療文化を築いてきました。8020運動の成功や学校歯科健診の充実は、世界に誇れる成果です。両国の良い点を学び合うことで、日本の口腔保健はさらに豊かになっていくと感じています。読者の皆さまも、ぜひ「次の歯科受診は、痛くなる前に」と考えてみてはいかがでしょうか。
⚕️ 医療情報についてのご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としており,個別の診断・治療の代替となるものではありません。 症状・治療方針については,必ず歯科医師にご相談ください。 掲載情報は執筆時点のものであり,診療内容・費用・制度は変更される場合があります。
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